作るべき社史とは?

 

作るべき社史とは?

社史って、どんな内容?
総合研究所を立ち上げるに当たって、私たちの使命は何か、何を期待されているのかを知りたくて、過去に社史を作られた方々にヒアリング調査を実施しました。
その中で、いちばん目立っていたのが、「どういう社史にしたらいいのかわからなかった」(全体の43.7%)という回答でした。

過去に何度も社史を公刊している大企業には、こういう悩みはまずありません。それらの社史の発刊の挨拶や序文をみると、発行の目的はどれもほぼ同じであることに気が付かれると思います。
「会社の歴史を記録して、後世に残しておくこと」
「後世の人々が、それを役立てること」

言葉遣いは違えども、このような趣旨であることは一致しています。
そして、そのために何十年もかけて、スタイルを洗練させてきました。
ですから、そのような大企業が社史を制作するときの課題は、前史に比べ多角化、グローバル化した業務内容をどう整理するか、日々進化している電子媒体をどこまで取り入れるか、どういう布陣で臨むか、など形式や体制面で、何を使って、どう書いたらよいかで悩むことはありません。

しかし、初めて社史をつくる会社はそうはいきません。
「昔の資料が全くないのに、できるのか?」
「どういう社史を作ればいいのか? 具体的な意見が出てこない」
「社史には何を盛り込むのかよくわからない」

そこで、図書館に行ってたくさんの社史を紐解きます。大企業の分厚い社史を見ると、
「わが社には、ここまで書ける資料はないな」
「これは読み通すのに苦労するな。うちの社員は読まないだろう」
「他社との違いを出したいのに、みんな同じに見える」

そこで、ソフトカバーの、もっと手軽そうな記念誌を手に取ると、
「会社沿革以外にも、たくさん記事があるな。こんなんでいいの?」
「普通の雑誌記事みたいな書き方の社史もあるんだ。硬いのとどう違うんだ?」

いろいろある中で、「わが社の社史はどれにするんだ? それを、どうやって決めるんだ?」
この入り口のところが、最初の障壁になるようです。
社史に限らず、どのような媒体でも、企画を考える際の基本は、誰に向かって、何を提供する(訴える)のかを決めることです。

「読まれない大部の本」という意味で、「昼寝の枕」「書棚の飾り」などと揶揄される大企業の分厚い社史は、記録して後世に残すことが目的です。小説のように一気に通読することを前提にしていません。後世の人が読んだときに、温故知新に十分な情報が得られることを目指してつくられています。百科事典を全巻通読された方はまずいないでしょう。それと同じようなものと考えていただいて差し支えありません。実際、社史には「企業の百科事典」というたとえもあります。

しかし、「新入社員研修で通読させる」という目的には、ヘビーに過ぎます。「理念を浸透させる」という目的だったらどうでしょうか。理念は膨大な情報の中に埋もれてしまって、どこにどう理念が生かされているのか、明快には浮き上がってこないでしょう。

ですから、初めての社史の制作は、誰に何のために読んでほしいのかを考えるところから始まります。広報のためなのか、営業のためなのか、社員研修のためなのか、それによって、内容も、つくり方も、形式も変わってきます。

そのように、どういう社史をつくればいいのかは、その会社自身が決めていかなくてはなりません。数多くの社史制作や資料アーカイブ構築の経験を通じて、そのプロセスのお手伝いをしていくことも、私たちの使命のひとつです。

<社史・アーカイブ総合研究所 研究員 吉田武志>

 
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