アーカイブの考察

 

災害と被災資料

災害が起こると、被災地の記録はどうなってしまうのでしょうか。
「歴史資料ネットワーク(史料ネット)」という団体があります。史料ネットは大阪歴史科学協議会、神戸大学史学研究会等の歴史関連学会を中心に、阪神・淡路大震災(1995年)を契機として1995年2月、被災した歴史資料保全のために開設されたボランティア団体です。対象は未指定文化財とされ、神戸大学文学部内に事務局を置き、研究者、学生、文化財担当職員、地域住民等の会員で構成されています。

これまで、阪神・淡路大震災の他に台湾大震災(1999年)、新潟県中越地震(2004年)、台風第9号(兵庫・岡山県、2009年)等の被災地で、地震や水害に遭った史料の物理的な救済及び現場での被災史料調査等の活動をしてきました。近年では、市民講座等でワークショップを開催し、培われたノウハウを人々へ伝える活動にも熱心に取り組んでいます。

水害には、被害状況が広範囲に及ぶ河川の氾濫・堤防の決壊・用水路・上下水道からの溢水・鉄砲水があります。これらは大量の歴史資料が被害に遭う可能性が高く、泥水・生活排水などの汚水による被害が雑菌・カビなどの生物被害を生みます。また、史料の水濡れ後の乾燥による固着も深刻な状況となっています。史料ネットでは(1)水損史料の現場からの救出・運搬、(2)史料の冷凍保存、(3)史料の乾燥修復措置、(4)史料所蔵者への返還 という流れで災害対応を行っていますが、さまざまな障害があり、現実は厳しいようです。
実際の現場では、救えるものから救うしかない、というのが実態のようです。しかし、だからこそ日常時の史料保全体制作りが大切、と史料ネットでは主張しています。東日本大震災における宮城県農業高等学校の所蔵書籍のレスキューを行った報告が、同ネットのブログに公開されています。記録を残すことの大切さを考えさせられる活動です。

 
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