アーカイブの考察

 

過去の災害記録とそれに基づいた研究

3月11日の地震・津波は多大な被害を及ぼしていますが、状況があきらかになるにつれて過去の記録とそれに基づいた研究をもっと活かすことで被害を減らせたのではないかという意見を聞く機会が増えてきました。
このことは現在も深刻な事態を脱していない福島第一原発の事故についてもいわれています。この事故の原因は、「想定外」の津波に襲われたからだというのが東京電力などの説明です。しかし研究者からは以前から地震や津波の危険性についての警告が出されていたというのです。

警告の根拠の一つになったのが貞観地震とそれに伴う津波です。貞観地震は『日本三代実録』(にほんさんだいじつろく、平安時代の歴史書)の貞観11年5月26日(西暦869年7月13日)の記事に登場する地震で、陸奥国(東北地方東部)で大規模な地震が発生し、仙台平野を大津波が襲ったことが記録されています。そのなかで津波については襲われた規模が大きかったことともに、被害状況が「船に乗るいとまあらず、山に登るも及びがたし、溺死するもの千ばかり」(東京大学保立道久氏による書き下し)という様子であったと伝えています。

この表現が誇張でなかったことは東北大学や産業技術総合研究所による調査により明らかにされており、たとえば津波による堆積物が宮城県から福島県の沿岸各地で見られることが分かっています。 このような歴史学と自然科学の研究成果によって過去の災害を明らかにしようという共同研究は長年行われていますが、今後防災面でのよりいっそうの活用が望まれます。普段から意識しておくだけでも意味があるのではないのでしょうか。

参考リンク
・福島第1原発:東電「貞観地震」の解析軽視(毎日新聞2011年3月26日)
箕浦 幸治「津波災害は繰り返す」『まなびの杜』16、2001年
保立道久「9世紀火山地震(5)――貞観地震」
・古代中世地震史料研究会作[古代・中世]地震・噴火史料データベース
・此処より下に家建てるな…先人の石碑、集落救う(読売新聞2011年3月30日)

 
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