記録管理の国際標準ISO15489では「記録の特性」、つまり良い記録の要件として、次の四つを挙げております。
すなわち(1)「真正性」(Authenticity)、(2)「信頼性」(Reliability)、(3)「完全性」(Integrity)、(4)「利用性」(Useability)の四つです。
(1)「真正な記録」とは、その記録が、次のことが証明できる記録のことです。
―その記録が称する通りの記録であること
―その記録を作成・送付したと称する人が、本当に作成・送付した記録であること
―その記録を作成・送付したと称する日時に、本当に作成・送付した記録であること
つまり、「真正な記録」とは、その記録が「本もの」であるということなのです。
(2)「信頼できる記録」とは、その内容が、組織活動や業務処理を正確・完全に表しており、その組織活動や業務処理が行われた直後に、それを実際に担当した人により作成されている記録のことです。
(3)「完全性のある記録」とは、その記録が完結しており、その後、いかなる修正・変更も行われていない記録のことです。
(4)「利用性のある記録」とは、組織の全員がその記録の所在場所がわかり、いつでも利用できるようになっている記録のことです。
そこで徳洲会からの借入金問題で辞任した猪瀬前東京都知事のケースに当てはめて考えてみましょう。まず猪瀬前知事は、5千万円の借入金が選挙資金ではなく、個人的な借り入れだと称しております。少し後にその5千万円の領収書を公開しましたが、その時点で、疑われたのは、その領収書が本当に猪瀬前知事の言う通りの内容のものかどうか、つまり領収書が「本もの」かどうかということが問題視されたわけです。
もう少し詳しく言うと、この領収書が、後で作成されたものではなく、本当に5千万円を借りた時点で作成されたものかどうか、ということが疑問視されたのです。
今後、この借入金問題の行方がどうなるのか、まだ予断を許しませんが、記録管理の面から言うと、この事件は正に、この領収書の「真正性」と「信頼性」が問われた事件だったのです。
社史・アーカイブ総合研究所 代表 小谷允志
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