アーカイブの考察

 

震災関連の会議における議事録不作成

2012年1月末、NHKニュース及び新聞各紙で報道されたのが、原子力災害対策本部の会議での議事録が作成されていなかったという事実です。
原子力災害対策本部といえば東日本大震災による東電原発事故の直後、当時の菅総理を本部長に全閣僚が出席して開かれた政府の対策会議です。

このような非常事態に際し国民の生命・財産に直接関係する重要会議の議事録が全く作成されていなかったとは、信じがたい出来事ですが、その後、当対策本部だけではなく15の震災関連の会議で議事録が作成されていなかったことが明らかになっています。

公文書管理法では「行政機関の職員は意思決定に至る過程並びに事務事業の実績を検証することができるよう、軽微な事案を除き、文書を作成しなければならない。(第4条)」と文書作成義務を規定しています。

しかしながら公文書管理法を待つまでもなく、このような未曾有の危機に際し、どのように情報を収集し、どのように対応したかを記録し、後から検証できるようにしておかなければ、高価な代償を払った、この得がたい経験を将来に活かすことはできません。
その意味でこれらの震災・原発事故対策会議で議事録が作られていなかったというのは、まことに残念という他はありません。

その直後の2月21日、アメリカ原子力規制委員会(NRC)は、東日本大震災が発生した昨年3月11日から10日間にわたる委員会内部の電話などによる緊急会議のやり取りを記した議事録を公開しました。

この議事録は実に3200ページに上る詳細なものです。
米国では、いち早くメルトダウンという最悪の事態を想定していたことがわかり、危機管理に対する日米間の落差の大きさに驚くと共に、記録の作成・保存・管理についての取組み方が、日米でこれ程までに違うのかということを、思い知らされた出来事でもあったのです。
その背景には、記録の価値についての基本的な認識、姿勢に大きな違いがあるように思われます。

社史・アーカイブ総合研究所 代表 小谷允志

 
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