社史・アーカイブ総合研究所研究員 宮本典子
社史に限りませんが、良い本は一曲の交響曲のようであってほしいと思います。変奏部分を含む多くの楽章があり、指揮者は多くの種類の楽器を取りまとめ、全体として調和のとれた美しいひとまとまりを構成します。
社史でいえば、もちろん沿革編にはその会社の歴史や経営に対する考え方が文章として書いてあります。その変奏部分としてトップインタビューや座談会といった違うかたちで本文をフォローします。さらに原稿だけでなく、写真の選び方、掲載の仕方、表紙やデザインも含めその会社らしさを表現するというのが理想です。
資料編には多くの社史で定番となっている売上高、組織図、歴代役員任期一覧、年表を載せておけばいいと考えている人が多いようです。しかし、資料編でもデータでその会社の発展を跡付ける必要があり、その足跡の一つの形が売上げのグラフなのです。資料編からもその会社らしさが見て取れるようでありたいものです。
内容面でも、デザイン面でも、そういう一冊になるように全体を管理し統括するのが編集者です。
ですからお客様と同じテンポ、同じ視点で考えていてはいけません。オーケストラの指揮者のように、常に一歩先を見据え、全体を見渡して、提案や準備ができるようになるのが理想的です。
「社史・アーカイブ総研の挑戦」(2019.10出版文化社刊より抜粋)
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