アーカイブの活用

 

アーカイブズを作ればいつでも社史が発行できる

日本では周年ごと節目の時期に社史を発行することが大変盛んです。熱心な企業は10年毎、20年毎に継続して発行することも珍しくありません。しかしながら、社史発行の基礎資料となるべき記録のアーカイブズ構築にはあまり熱心ではありません。一方、アメリカなどではあまり日本のような形式の社史を発行する習慣はありませんが、立派な記録アーカイブズを構築している企業は数限りなく存在します。この違いはどこから来るのかを考えて見るのも非常に興味深いことです。

もともと欧米では日本と違い記録を大事にする文化が根付いていると言えばそれまでですが、次のように考えることもできるでしょう。アメリカの場合、その企業の過去の歴史的事実の証拠となる原記録がアーカイブズに残されており、社員や関係者はいつでもこれらを直接参照することができるので敢えて社史を発行する必要を感じないのかも知れません。その逆で日本の場合はそもそも記録を残すという文化がないので、周年ごとに社史としてまとめておく必要があるわけです。しかしながら日本でも江戸時代には各地の大名家や大きな商家などできちんと記録を残す文化があったのですから、なぜ近代になってこの習慣が消えてしまったのか不思議です。御家を守る必要がなくなってしまったためでしょうか。

もう一つ不思議なのは、日本で社史を発行する場合、その都度、社史編纂室等が設けられ、執筆の材料となる資料、記録の類を一から収集し始めるというケースが非常に多いことです。普段から歴史的に重要な資料を記録として残す仕組み、すなわちアーカイブズを作っておけば何時でも社史が発行できるからです。また一旦社史が出来上った後、使った記録や資料がお役ご免とばかり倉庫に眠ってしまうケースも多いのです。社史作成に使った記録資料類の目録を作るなど体系化を図り、整理保存すれば簡単にアーカイブズ作りが始められます。良い資料なしに良い社史ができるはずもありませんし、また社史ができたからと言って、一次資料である原記録へ当る価値が消滅するわけでもありません。ある意味で社史はそれらを加工した単なる二次資料に過ぎないのですから。立派なアーカイブズと立派な社史が揃えば、企業としてこれほど多方面で有効活用できる情報資産は他にないと言えるでしょう。そろそろ日本の企業も社史とアーカイブズの連携、一体化を真剣に考えることが必要ではないでしょうか。

社史・アーカイブ総合研究所 代表 小谷允志

 
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